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BUNKA FASHION RENAISSANCE2020<br>金沢文化服装学院作品展示

アクティビティレポート

BUNKA FASHION RENAISSANCE2020
金沢文化服装学院作品展示

2020.03.10

北陸金沢から当財団に毎年見学に来てくださっている金沢文化服装学院。卒業・進級作品展示会とファッションショーを行うというご連絡をいただき、展示会に伺いました。展示会場は世界有数の現代アートの展示と交流の場 「金沢21世紀美術館」。学生の方々の熱意溢れる展示会模様をご報告します。


白に限定して制作されたコレクションたち

今回は学年ごとに異なるテーマで制作した作品を展示していました。
まず1年生のプレゼンテーションから。
会場に入る手前のスペースがアパレル造形デザイン科&アパレル基礎科の方々の発表の場で、白のワンピースが15体並びます。 これは、ギャザー、プリーツ、カットワーク、染色、編み、ししゅうなど、生地を加工する方法をデザインに落とし込み、ワンピース、色は白に限定して製作したものです。

まずは学んだ技術を服に落とし込むことを目的に製作したそうですが、一口に白といってもホワイト~エクリューのカラーレンジの中には様々な色があり、加えて多彩な素材の組み合わせ、しかも加工部分の質感の変化もあるので、バリエーション豊かで創造的なワンピースになっています。

最近のマーケットにはシンプルで着やすい服が溢れているので、様々な加工を施したワンピースはとても新鮮。立体的な布のモチーフや、タックがシンプルなワンピースの表情を変えていく様子は大変興味深く、ひとつ一つ見入ってしまいました。手仕事の技が凝縮されたコーナーで、改めてクラフト感覚の素晴らしさを実感したコレクションでした。

紐使いや立体的なタックなどいろいろな技術がミックスされたドレス

種類の異なる生地のカットワークやコード刺繍で年輪を表現

 

学生たちの個性が光るオリジナルプリント

会場に入るとアパレル造形デザイン科の2年生たちがファッションブランド「divka」のデザイナー、モデリストの方から特別講義を受け、作った服が12体展示されています。布は「Noto Textile Labo」という石川県の産地のご協力の下、各自がデザインしたオリジナルプリントを使用。

地元の産地のプリントを使用したドレス

会場の中央にも同科の2学生が企業デザイナーの仕事を想定し、実際の企業の企画書を用いてラインナップを作成したコレクションもあり、ボディの前に置いてある企画書から、作品の意図が伺えたのも興味深かったです。

向かって左のブランドはアウトドアを都会的にアレンジ。手前には企画書が展示されている。

 

セレクトショップ形式で表現された集大成のコレクション

最後はアパレル造形デザイン科の3年生たちの展示です。
商品にとどまらず、自分のブランドのコンセプトから、ロゴ、イメージビジュアル(DM)までを作成し、それを3つグループに分けショップコンセプトやロゴ、内装デザインも自分たちで考えます。
実際に使った什器もスケッチを描いて、イメージに沿ったものを作り上げたそうです。

「KILIG」は、シンプルでナチュラル、そこに少しのモード感を足したブランドが集まっていて、テントやグリーンなど、ナチュラル感がある空間で見せています。「Pinkies Baby Finger」は、ファンシーな世界で、おとぎ話のような世界観が拡がります。「STACHYRUS PRAECOX」は、解放された空間の中で、モードと日常感の混じった服が、高さを変えてハンギングされているのですが、シンプルにハンギングすることで、会場の高い天井が生かされています。

そうして3つの仮想セレクトショップが誕生し、その空間に作品が展示されていました。

KILIG

Pinkies Baby Finger

STACHYRUS PRAECOX

それぞれのブランドコンセプトは

「KILIG」・・・日常と自分を着る
「Pinkies Baby Finger」・・・心ときめく福屋さん
「STACHYRUS PRAECOX」・・・アドバンスでアットホームな空間であり、お客様の強いライフスタイルの下地になれるように

ファッションに欠かせないブランディングや、空間演出も含めて提案されたコレクションですが、それを行うことで、自分の作った服をどうやってお客様に届けるかを体得していくのだと思いました。

参加された学生さんからは、「ブログを書くように服に自分の思いを込めて服を作る(1年生)」、「舞台衣装がやりたいので、まずはこれからの就職先で修行をして、お金をためて、目標に向けて頑張りたい(3年生)」などなど、力強いコメントが聞かれました。

今マーケットで主流のものは、シンプルで着回しが効くもの。さらに最近は着回しする余裕もなく、「組み合わせがしやすいものが欲しい」というように、楽な方向へのニーズが高まり、ファッション界全体に今一つ元気がないのが現状です。そんな中、金沢文化服装学院の皆様のコレクションを見て、当財団のメンバーも大いに励まされ、皆さんの将来に希望を感じる展示会でした。


【取材協力】
学校法人 金沢文化学園
専門学校 金沢文化服装学院

清川町校舎 〒921-8032 金沢市清川町1番5
竪町校舎 〒920-0997 金沢市竪町40番地
https://www.kanabun.ac.jp/

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